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本文:PDF 外国知的財産制度に関する調査研究報告 | 経済産業省 特許庁

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(1)

平成26年度 特許庁産業財産権制度各国比較調査研究等事業

海外での早期権利取得を支援する特許審査の運用

に関する調査研究報告書

平成27年3月

一般社団法人 日本国際知的財産保護協会

(2)
(3)

はじめに

特許審査ハイウェイ(PPH:Patent Prosecution Highway)は、特許庁間のワークシ ェアリングを促進するとともに、ユーザーの各国での早期権利取得を支援するために、あ る特許庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、他の特許庁におい て簡易な手続で早期審査を受けられるようにする仕組みである。

PPHは、これまで二つの特許庁間の取決めにより申請可能な対象案件や申請要件を定め ていたため、各庁によって申請要件が異なる問題が生じていた。近年、利用可能な PPH の種類(通常のPPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPH)を標準化したグローバルPPH試 行プログラムが開始されたほか、日米欧中韓の五大特許庁(IP5)の間でのIP5PPH試行 プログラムも開始されたところであるが、申請要件については依然として各庁に差異があ る状況である。また、各庁における事情についてみてみると、PPH申請に当たって従来期 待されていた利便性が損なわれている事例が外部ユーザーから指摘されている。

このようなスキーム全体や個別庁に対する改善要望を網羅的に把握し、多庁間の交渉に おけるスキーム改善や、各庁との交渉における改善の働きかけを行うことは、我が国ユー ザーにとってのPPH利便性向上に資するものであり、また、PPHの利用が促進されるこ とで庁間においてのワークシェアリングが促進され、庁にとってもメリットのあるものと なる。

一方、PPHと同様に我が国ユーザーの海外での適切な特許権取得の支援と特許審査の国 際ワークシェアリングを推進するため、我が国では審査結果を世界にいち早く発信する施 策であるJP-FIRST(JP-Fast Information Release STrategy)を平成20年4月から開始 しているが、当時と比べ、審査順番待ち期間は大幅に短縮されている等、当該スキームの 開始当初とは特許審査をめぐる環境が変化しており、現状でどのようなニーズがあるのか を把握することも必要である。

本調査研究では、海外での早期権利取得を支援する特許審査の運用について、具体的に は、PPHや JP-FIRST を含む仕組みについての個別具体的な外部ユーザーのニーズ、改 善要望、実際に感じているメリット・デメリットを適切に把握し、今後の施策立案・推進 のための基礎資料として役立てることを目的とする。

本調査研究がPPHやJP-FIRSTといった海外での早期権利取得を支援する特許審査の 運用の発展に寄与するものとなれば幸いである。

また、本調査研究の遂行にあたってご協力をいただいた企業、独立行政法人、大学及び 海外法律事務所の方々に、この場を借りて深く御礼申し上げる。

(4)
(5)

概要

(1)目的・調査対象

本調査研究は、海外での早期権利取得を支援する特許審査の運用について、具体的には、 特許審査ハイウェイ(PPH:Patent Prosecution Highway)や JP-FIRST(JP-Fast Information Release STrategy)を含む仕組みについての個別具体的なユーザーのニーズ、 改善要望、実際に感じているメリット・デメリットを適切に把握し、今後の施策立案・推 進のための基礎資料として役立てることを目的としたものである。

米国・中国・韓国・台湾・ドイツ・イギリス・シンガポール・フィリピン・インドネシ ア・タイの10か国・地域に加え、欧州特許庁(EPO)を調査対象とした。

(2)調査研究実施方法

国内企業・大学などの国内ユーザーに対するアンケート及びヒアリング並びに米国、イ ギリス、ドイツ、中国及び韓国の法律事務所に対するアンケート及びヒアリングを実施し た。また、学識経験者、法律家(弁理士)及び産業界有識者それぞれ1名以上なるワーキ ンググループを構成し、会合を設け、調査研究の各段階で監修・助言を受けた。

(3)調査結果(PPH

(ⅰ)国内ユーザーの意識・意見について

PPHは多くのアンケート回答者がその存在を知っており、国内ユーザー間において高い 認知度であることが示された。通常型 PPH の認知度が一番高く、PCT-PPH、PPH MOTTAINAI、グローバル PPH、IP5PPH と順に認知度が下がっていた。アンケート回 答者の約62%がPPHを利用したことがあると回答したことから、国内ユーザー間では認 知度のみならず、利用も進んでいるものと考えられる。

国内ユーザーの考える PPH のメリットは「早期に審査結果を得られる」、「オフィスア クションの回数を減らせる」、「特許査定率が向上する」の順で回答が多かった。ただし、 「特許査定率が向上する」については、これをメリットと考える国内ユーザーが他の2つ に比べて明らかに少なかった。日本国特許庁(JPO)のWebページやPPHポータルサイ トで掲げられているメリットであるにも関わらず、このような結果になっている点は考察 が必要である。

国内ユーザーの考える PPH のデメリットは「権利範囲が自ずと第一国での権利範囲よ り同等か狭いものとなる(設定できる権利範囲に自由度がない。)。」であった。PPHの前 提ではあるが、「請求項が十分に対応する」という要件の緩和が期待されている様子がうか がえた。なお、同要件の緩和については、第二医薬用途やプログラム等、各庁間でクレー ムの書き方が異なる保護対象についても、同様のニーズがうかがえた。

(6)

た。

さらに、多数の国内ユーザーはコストメリットがあると考えている可能性が示された。 コストメリットがある理由としては、オフィスアクションの回数が減ることによる負担の 減少を挙げていた。オフィスアクションが減ることにより、代理人費用が削減される他、 社内の人件費(人工数)が削減されるなどして、コストメリットが生ずると考えられるた めである。一方、コストメリットがないと回答した国内ユーザーもいた。オフィスアクシ ョンの回数はPPHの利用の有無に影響しないとすると、PPH申請のための準備費用や管 理工数の分、コストが増加するという意見であった。

PPH を利用したことがある回答者の多くは、今後も PPHを利用したいと考えていた。 また、PPHを利用したことがない回答者も、6割以上が、機会があれば利用したいと考え ていた。利用したい理由は、「早期に審査結果を得られる」、「オフィスアクションの回数を 減らせる」、「特許査定率が向上する」の順であり、PPHのメリットの傾向とほぼ一致して いた。逆に利用したくないと考えている国内ユーザーは、そもそも早期に権利化するよう な案件やニーズがないということを理由に挙げていた。

PPHの拡大としては、インドやブラジル、ベトナムでPPHを利用できるようにしてほ しいという声が多かった。また、タイやインドネシアなどの東南アジア諸国で利用できる PPHの種類を拡大してほしいという要望が聞かれた。

PPHの改善としては、各国申請要件の統一や申請フォームの統一という点が多く挙げら れた。指摘されていた PPH のデメリットに鑑みれば、権利範囲の設定の自由度を確保す るために、申請要件の緩和を希望する要望が多いことが予想されたが、国内ユーザーには PPHの申請要件や手続の国際調和を望む意識が強いことがうかがえた。

(ii)海外でのPPHの利用について 【米国】

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。困った事例として、独自の審査によるオフィスア クションの発行やアクションの回数が想定よりも多いことが指摘されている。オフィスア クションの発行時期が遅かった事例も指摘されるが、5 か月以内にファーストアクション を受けられると考えている回答者が 5 割以上いるようである。PPH を利用することで、 費用は削減しているかあるいは増減がないと考えられる。トラック・ワンといった早期審 査制度の利用を検討する国内ユーザーもいる。

■ 米国の法律事務所によるPPHの利用について

(7)

類の準備等」を国内ユーザーよりも顕著に捉えている可能性がある。また、法律事務所は PPHにはコストメリットがあるという見解で一致していた。PPHを利用して得られた権 利も、通常審査を通じて得られた権利も、安定性は変わらない可能性が高いという見解で あった。PPHの利用で困った点は、申請が受理されなかったことや早期に権利化ができな かったことを挙げていた。

EPO

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。困った事例として、独自の審査によるオフィスア クションの発行や権利化までに時間を要することを挙げている。オフィスアクションの発 行時期が遅かった事例が多く指摘され、ファーストアクションは8か月以上必要になる場 合も少なくない。しかしながら、PPHを利用した案件の登録率は90%以上を超えると回 答したユーザーが多い。また、PPHを利用しても、費用(コスト)はあまり変化がない可 能性がある。EPOで運用されているPACE と呼ばれる早期審査制度の利用をする国内ユ ーザーも多い。

■ イギリス・ドイツ法律事務所によるEPOでのPPHの利用について

法律事務所は、出願人の指示によってEPOでPPHを利用しており、自ら利用の提案を していないようである。PPHのメリットは、ファーストアクションを素早く受けることが できる点であり、デメリットは、書類の準備や要件の確認が必要になる点であると考えて いる。しかし、PPHよりもPACEの方が利便性が高いことから、PACEの利用を勧める 法律事務所が多い。したがって、法律事務所は PPH にはコストメリットがないと考える 法律事務所の方が多い。PPHを利用して得られた権利も、通常審査を通じて得られた権利 も、権利の安定性は変わらない可能性が高いという見解であった。PPHの利用で困った点 は、早期に権利化ができなかったことや特許率が向上しなかったこと、独自の審査を受け ることを挙げていた。補正要件が JPO よりも厳格である点もしばしば問題となるようで ある。

【イギリス】

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

JPOの成果物等を利用したイギリスでのPPHの申請は累計で50件程度(2014年6月 末時点)であり、国内ユーザーにおいてもイギリスでの PPH の利用に関する知見は多く ない。合計 4 者から得られた回答からすれば、PPH のメリットである早期審査や特許査 定率の向上、拒絶対応費用の削減等を目的に PPH を利用している。なお、本調査研究に おいては、困った事例は聞かれなかった。

■ イギリス法律事務所によるPPHの利用について

(8)

を利用している。PPHのメリットとして「ファーストアクションまでの期間が短くなるこ と」を指摘し、デメリットとして「要件の確認」や「書類の準備」を指摘していた。また、 PPH の利用によるコストメリットはないという見解であるようだが、イギリス特許庁 (UKIPO)はJPOの審査結果を尊重する傾向にあるようであり、PPHを利用することで オフィスアクションは減る可能性があるという指摘があった。PPHを利用して得られた権 利も、通常審査を通じて得られた権利も、安定性は変わらない可能性が高いという見解で あった。PPHの利用で困った点は、申請が受理されなかったことや独自の審査をされたこ とを挙げていた。UKIPO では、調査の請求と実体審査請求を同時に行うことにより、調 査報告とオフィスアクションを同時に受けることができる。調査報告は出願公開と同時に なされるため、早期にアクションを受けることができる。このような早期審査も有用であ る。

【ドイツ】

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。困った事例としては、早期審査着手がされなかっ たことや、早期に権利化できなかったことが挙げられた。PPHを利用することで、費用は 増減がないかやや増加する可能性がある。

■ ドイツ法律事務所によるPPHの利用について

ドイツの法律事務所は、出願人の指示にもとづいてPPHを利用している。PPHのメリ ットとして「ファーストアクションまでの期間が短くなる」としているが、一方で国内ユ ーザーや法律事務所ともども、早期着手がされない事例があることを問題点としている。 デメリットは「要件の確認」や「手続書類の準備」を挙げていた。また、法律事務所はPPH のコストメリットについてはやや懐疑的であった。PPHを利用して得られた権利も、通常 審査を通じて得られた権利も、安定性は変わらない可能性が高いという見解であった。

【中国】

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。困った事例として、独自の審査によるオフィスア クションの発行やアクションの回数が想定よりも多いことを挙げている。また、他の国に 比べて、PPHの申請が受理されなかったという事例が多く聞かれた。また、中国国内の公 開が申請要件になっていることも問題になっているようである。通常型の PPH を利用す ることで、費用は削減しているかあるいは増減がない可能性が高い。

■ 中国法律事務所によるPPHの利用について

(9)

利用している。PPHのメリット・デメリットについて、国内ユーザーと概ね同様の点を指 摘している。また、法律事務所は PPH にはコストメリットがあるという見解で一致して いた。PPHを利用して得られた権利は通常審査を通じて得られた権利よりも安定している あるいは、変わらないという見解の法律事務所が多かった。PPHの利用で困った点は、申 請が受理されなかったことに関する事例が多かった。

【韓国】

■ 日本国内ユーザーによるPPHの利用について

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。韓国でのPPHの利用では、「特に困ったことはな い。」を選択したユーザーが多く、PPHのメリットを享受できているユーザーの様子がう かがえる。PPHを利用することで、費用は削減していると考えるユーザーが多い。

■ 韓国法律事務所によるPPHの利用について

韓国の法律事務所は、出願人の指示に基づき、又は自ら出願人に利用を提案し、PPHを 利用している。PPHのメリット・デメリットについて、国内ユーザーと概ね同様の点を指 摘しているが「要件の確認」や「手続書類の準備等」をデメリットとして挙げる法律事務 所が少なかった。法律事務所は PPH にはコストメリットがあるという見解で一致してい た。PPHを利用して得られた権利も、通常審査を通じて得られた権利も、安定性は変わら ない可能性が高いという見解であった。PPHの利用で困った点は、独自の審査を受けたこ とを挙げる法律事務所が多かったものの、他の国に比べて問題となる事例は少なかった。 PPHの利用を勧める法律事務所は多かった。

【台湾】

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や拒絶対応費用の削減等を目的に PPHを利用している。申請書類の作成や要件の確認、代理人への指示などのために通常案 件にはない新たな負担が発生している。時期的要件の緩和や PCT 加盟を求める声などは 聞かれたが、PPHの利用で困った事例は特に挙げられなかった。回答者が少なかったが、 費用対効果(コストメリット)はあると考えられる。

【フィリピン】

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や特許率の向上を目的にPPHを 利用している。PPHの利用で困った事例は特に挙げられなかった。JPO の成果物を利用 したフィリピンでのPPHの申請は、件数自体がまだ少なく、実例は多くない。

【タイ】

(10)

早期に権利化できなかったことが挙げられた。したがって、改善要望としても審査の迅速 化に関する意見が聞かれた。タイでの PPH の申請は、件数自体がまだ少なく、実例は多 くない。

【シンガポール】

日本国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査や特許率の向上、拒絶対応費用の 削減を目的に PPH を利用している。申請書類の作成や要件の確認、管理、代理人への指 示などのために通常案件にはない新たな負担が発生している。申請の準備に手間があると 答えたユーザーもいたが、PPHの利用で困った事例は特に挙げられなかった。シンガポー ルでのPPHの申請は、件数自体がまだ少なく、実例は多くない。

【インドネシア】

国内ユーザーは、PPHのメリットである早期審査等を目的にPPHを利用している。申 請要件の確認、代理人への指示などのために通常案件にはない新たな負担が発生している。 PPHの利用で困った事例としては、通常型のPPHの利用で、早期に審査着手がされなか ったことや早期に権利化できなかったことが挙げられた。したがって、審査を迅速化して ほしいという改善要望が挙げられていた。インドネシアでの PPH の申請は、件数自体が まだ少なく、実例は多くない。

(4)調査結果(JP-FIRST

JP-FIRSTは7割の回答者が知っていると回答した。PPHに比べると認知度が低いこと がわかった。また、75%以上の回答者がJP-FIRSTを活用していないと回答した。意図的 にJP-FIRSTの対象となるように、パリ優先権の基礎となる2年以内に審査請求をする場 合を「積極的な活用」、2年以内に審査請求をしているものの別の理由による場合を「消極 的な活用」と定義した場合、積極的に活用しているとした回答者は約 7%、消極的に活用 していると回答したのは約17%であった。

積極的に活用している理由として、早期に日本での特許可能性を判断するためという回 答を選んだ回答者が多かった。また、JP-FIRSTの利用者からは、JP-FIRSTの効果とし て、国内出願の審査結果を早期に得ることができたという意見が最も多く聞かれた。

また、JP-FIRST を活用していない理由としては、2 年目以降まで審査請求すべきか否 かを見極めるためという回答を選んだ回答者が多かった。また、JP-FIRSTの制度を知ら ない、あるいはよくわからないためという意見もあった。

JP-FIRST の困った事例としては、JP-FIRSTを利用しない理由で挙げられていた「否 定的な審査結果を他国の審査が始まる前に発信される」のが困るという意見や、管理面の 負担、他国の審査に寄与していない可能性、意図しない早期審査を懸念する意見が出され た。

(11)

謝辞

本調査研究の遂行にあたり、下記の方々にご協力をいただいた。この場を借りて、深く 御礼申し上げる。

【国内企業・独立行政法人・大学等】

アンケート・ヒアリング調査にご協力をいただいた企業・独立行政法人・大学の皆様

【各国法律事務所】

Birch, Stewart, Kolasch & Birch, LLP(米国) Sughrue Mion, PLLC(米国)

Oblon, Spivak, McClelland, Maier & Neustadt, LLP(米国) Oliff & Berridge, PLC(米国)

Buchanan Ingersoll & Rooney PC(米国) Cantor Colburn LLP(米国)

Foley & Lardner LLP(米国) TBK(ドイツ)

Isarpatent(ドイツ)

Winter, Brandl, Fürniss, Hübner, Röss, Kaiser, Polte - Partnerschaft(ドイツ) Hoffmann Eitle(ドイツ、イギリス)

Mewburn Ellis(イギリス)

Withers & Rogers LLP(イギリス) 金・張法律事務所(韓国)

崔達龍国際特許法律事務所(韓国) 康&康国際特許法律事務所(韓国) MEGA国際特許事務所(韓国)

(12)

ワーキンググループ会合メンバー名簿

【ワーキンググループ】

座長 南 孝一 一般社団法人日本国際知的財産保護協会 理事長 新留 豊 国立大学法人政策研究大学院大学 准教授

福地 律生 青和特許法律事務所 弁理士

福本 滝男 一般社団法人日本知的財産協会 国際第2副委員長 本田技研工業株式会社 知的財産部

【オブザーバー】

諸岡 健一 特許庁審査第一部調整課審査企画室 室長

仁木 学 特許庁審査第一部調整課審査企画室 課長補佐 審査企画班長 西 秀隆 特許庁審査第一部調整課審査企画室 審査企画第一係長

小太刀 慶明 前・審査企画班長 瀧澤 佳世 前・審査企画第一係長

【事務局】

川上 溢喜 一般社団法人日本国際知的財産保護協会 国際法制研究所 所長 岩本 東志之 一般社団法人日本国際知的財産保護協会 国際法制研究所

主任研究員(総括)

生田 力与 一般社団法人日本国際知的財産保護協会 国際法制研究所 主任研究員(主担当)

南 政江 一般財団法人日本国際知的財産保護協会 国際法制研究所 主任研究員(副担当)

(13)

目次

本編

I.本調査研究の目的・調査対象...1

1.背景 2.目的 3.調査対象 II.本調査研究の実施方法...5

1.国内アンケート調査 2.国内ヒアリング調査 3.海外法律事務所調査 4.海外ヒアリング調査 5.ワーキンググループ会合による検討 III.調査結果(PPH)………….…...9

1.PPHの経緯と現状 2.国内ユーザーの意識・意見 3.外国におけるPPHの利用 【米国】………..………...61

【EPO】………..………...97

【イギリス】………127

【ドイツ】………..……….143

【中国】………..……….163

【韓国】………..……….197

【台湾】………..……….…229

【フィリピン】…………...……….…239

【タイ】………..……….…243

【シンガポール】………249

【インドネシア】………...……….255

IV.調査結果(JP-FIRST)………..………..263

1.JP-FIRSTの経緯と現状 2.国内ユーザーの意識・意見 V.調査結果の考察と概括…………...………..271

1.PPHに関する考察 2.JP-FIRSTに関する考察 3.概括表

資料編

(14)
(15)

I

.本調査研究の目的・調査対象

1.背景

特許審査ハイウェイ(PPH:Patent Prosecution Highway)は、特許庁間のワークシ ェアリングを促進するとともに、ユーザーの各国での早期権利取得を支援するために、あ る特許庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、他の特許庁におい て簡易な手続で早期審査を受けられるようにする仕組みである。我が国特許庁(JPO)の 提唱により、平成18年に米国特許商標庁(USPTO)との間で開始されて以降、参加国が 拡大し、平成 26 年末時点で 33か国・地域に拡大しており、世界での累積申請件数は約

74,000件である。

PPHは、これまで二つの特許庁間の取決めにより申請可能な対象案件や申請要件を定め ていたため、各庁によって申請要件が異なる問題が生じていた。平成26年1月6日から、 利用可能なPPHの種類(通常のPPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPH)を標準化したグ ローバルPPH試行プログラム(以下「グローバルPPH」という。)が、我が国を含む17

の国・地域の特許庁の間で開始されたほか、日米欧中韓の五大特許庁(IP5)の間での

IP5PPH試行プログラム(以下「IP5PPH」という。)も開始されたところであるが、申請 要件については依然として各庁に差異がある状況である。

また、各庁における事情についてみてみると、例えば、①中国では、補正の時期的制限 や、PPHにおけるPCT国際出願の国際段階の成果物を利用した他庁にない独自の要件(記 載要件についての見解が含まれている場合にはPPH申請不可。)を設けていたり、②ドイ ツにおいては、低い即特許率やセカンドアクション以降の審査遅延等が生じていたりする など、各庁への PPH 申請に当たって従来期待されていた利便性が損なわれている事例が 外部ユーザーから一部指摘されている。

この点に関し、平成26年2 月に公表された「産業構造審議会知的財産分科会とりまと め」では、「特許審査ハイウェイ(PPH)の運用改善」として、「グローバルに活動する我

が国企業が各国で早期に権利取得する際の利便性向上のため、二国間及び多国間交渉の場 を通じて、必要書類や申請要件(例えば、提出書類の機械翻訳の許容等)など PPH 関係 手続の標準化を推進する」とされている1

このようなスキーム全体や個別庁に対する改善要望を網羅的に把握し、多庁間の交渉に おけるスキーム改善や、個別庁との交渉における改善の働きかけを行うことは、我が国ユ ーザーにとってのPPH利便性向上に資するものであり、また、PPHの利用が促進される ことで庁間においてのワークシェアリングが促進され、庁にとってもメリットのあるもの となる。

1 産業構造審議会知的財産分科会事務局「産業構造審議会知的財産分科会とりまとめ」13

(16)

さらには、当該スキームの改善・施策推進における優先順位を決定する上では、現在PPH

のメリットとしてうたわれている、早期の権利取得、高い特許率、オフィスアクションの 減少に伴うコスト低減やそれら以外の点のうち、ユーザーがどこにメリットを感じている のか、具体的にどの程度の効果があったのか、今後どのような国・地域への PPH 拡大の ニーズがあるのか等をより具体的に把握することが必要である。

一方、PPHと同様に我が国ユーザーの海外での適切な特許権取得の支援と特許審査の国 際ワークシェアリングを推進するため、我が国では審査結果を世界にいち早く発信する施 策であるJP-FIRST (JP-Fast Information Release STrategy)を平成20年4月から開

始しているが、当時と比べ、審査順番待ち期間は大幅に短縮されている等、当該スキーム の開始当初とは特許審査をめぐる環境が変化しており、現状で、どのようなニーズがある のかを把握することも必要である。

2.目的

本調査研究では、海外での早期権利取得を支援する特許審査の運用について、具体的に は、PPHや JP-FIRST を含む仕組みについての個別具体的な外部ユーザーのニーズ、改 善要望、実際に感じているメリット・デメリットを適切に把握し、今後の施策立案・推進 のための基礎資料として役立てることを目的とする。

3.調査対象

(1)調査対象国

アメリカ合衆国(以下「米国」という。)、中華人民共和国(以下「中国」という。)、大 韓民国(以下「韓国」という。)、台湾、ドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)、グ レートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「イギリス」という。)、シンガポール 共和国(以下「シンガポール」という。)、フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)、 インドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)及びタイ王国(以下「タイ」という。) の10か国・地域に加えて、欧州特許庁(以下「EPO」という。)を対象とする(以下「調

査対象国」という。)。

(2)調査研究の対象項目

(17)

(調査項目) (i)PPH関連

PPHの利用状況や改善要望、各国の状況に関し、少なくとも以下に例示する項目を調査 する。

・PPHの利用の有無、利用している場合に利用した理由、場面

・PPH の申請に当たって困った具体的な事例、申請をしようとしたがすることができ なかった事例、PPH申請後の運用・対応で困った事例等

・PPHのその他の改善要望

・PPHの効果を示す定量的なデータ(特許件数、特許率、審査期間等)

・一般的な出願と PPH とのコスト構造比較(出願人、代理人、知財庁、翻訳、その他 諸費用についてどこにどの程度の費用がかかるか)と、PPHの費用対効果

・PPHについて今後拡大を希望する国・地域

・PPH以外に海外での早期権利取得のために利用している制度とPPHと比較した利害 得失

・手続上の負担、PPH出願管理の負担

・PPHの認知度(MOTTAINAI、PCT-PPHも含む) ・PPHの情報量

・PPH共通申請フォームを導入することに対する意見

(ii)JP-FIRST関連

JP-FIRSTの利用状況や改善要望に関し、少なくとも以下に例示する項目を調査する。

・JP-FIRSTを積極的に活用しているか否か ・JP-FIRSTを活用している理由、場面 ・JP-FIRSTで困った具体的な事例 ・JP-FIRSTの改善要望

・JP-FIRSTの効果を示す定量的なデータ

(18)
(19)

II

.本調査研究の実施方法

1.国内アンケート調査

我が国における企業、大学、独立行政法人等に対して、アンケート調査を実施した。 アンケートの送付先は、特許庁の提示に基づいた。アンケート票は、各者に郵送を行い、 希望者に対しては電子版アンケートをEメールにて配布した。締切り1週間前に、再度は

がきによって調査協力の依頼を行った。

国内アンケート調査実施時期:2014年10~11月 対象:国内企業、大学、独立行政法人 498者 回答数:221

回収率:44.8%(3者合同回答があったため、回答者数を223として計算した。)

アンケート回収の推移を図II-1に示す。また、アンケート回答者の業種内訳を下記の図 II-2に示す。

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0%

0 50 100 150 200 250

回 収 率 回

収 件 数

図II-1 アンケート回収の推移(2014年10月10日~10月末)。ただし、11月以降に19件受領した

(20)

建設業 0 者(0.0%)

食品製造業 3 者(1.4%)

繊維・パルプ・紙 製造業 7 者(3.2%) 医薬品製造業

8 者(3.7%)

化学工業 29 者(13.2%)

石油石炭・ プラスチック・

ゴム・窯業 12 者(5.5%)

鉄鋼・非鉄金属製造 業

11 者(5.0%)

金属製品製造業1 者 (0.5%) 機械製造業

16 者(7.3%) 電気機械製造業

63 者(28.8%) 輸送用機械

製造業 22 者(10.0%) 業務用機械器具

製造業 10 者(4.6%)

その他の製造業 19 者(8.7%) 情報通信業

3 者(1.4%) 卸売・小売等 0 者(0.0%)

その他の非製造業 3 者(1.4%)

大学 9 者 (4.1%)

独立行政法人 3 者 (1.4%)

図II-2 アンケート回答者の業種内訳(N=219、無回答=2)

2.国内ヒアリング調査

前記I.3.(2)の調査項目(観点)をさらに詳細に調査し、海外での早期権利取得を 支援する特許審査の運用に関するユーザニーズ等を把握するために、国内アンケート調査 結果と業種を参考にして選定した大企業、中小企業、大学等 20 者に対して国内ヒアリン グ調査を実施した。

ヒアリングは、対象者を訪問することで行った。

国内ヒアリング調査時期:2015年1~2月 対象:国内企業、大学 20者

3.海外法律事務所調査

(21)

海外法律事務所調査実施時期:2014年11月 対象:海外法律事務所 22者

(米国7者、イギリス3者、ドイツ4者、中国4者、韓国4者)

※イギリス・ドイツの7者に対しては、同時にEPOの状況について質問した。

4.海外ヒアリング調査

質問票による調査結果を踏まえて、質問票調査対象国の法律事務所を 13 者選出した。 これらの法律事務所の現地を訪問し、海外ヒアリング調査を行った。

海外ヒアリング調査実施時期:2014年11月~12月 対象:海外法律事務所 13者

(米国3者、イギリス2者、ドイツ3者、中国3者、韓国2者)

※イギリス・ドイツの5者に対しては、同時にEPOの状況についてヒアリング を行った。

5.ワーキンググループ会合による検討

本調査研究の各段階で監修・助言を受けるため、知的財産制度に対して豊富な知見を有 する「学識経験者」、「法律家(弁理士)」及び「産業界有識者」それぞれ 1 名以上から、 ワーキンググループ(WG)を構成し、会合を設けた。

第1回WG会合(2014年9月12日)

調査研究の進め方について検討を行った。 第2回WG会合(2014年12月18日)

国内アンケート調査、海外法律事務所調査、海外ヒアリング調査の結果について検 討を行った。

第3回WG会合(2015年2月18日)

(22)
(23)

III

.調査結果(

PPH

1.

PPH

の経緯と現状

(1)PPHの開始

日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)及び欧州特許庁(EPO)の三極特許

庁では、特許出願件数の増加に伴って、滞貨件数の増加と審査期間の長期化が問題となっ

ていた。例えば、2005年時点において、JPOの滞貨件数は75.5万件、審査順番待ち期間

は26か月であった2。そのような状況の中、多くの出願をやり取り(下図参照)している

三極特許庁間において、互いの審査結果を活用することで審査負担を軽減すること(ワー

クシェアリング)ができないか議論がなされた。その中で、JPOが提唱した特許審査ハイ

ウェイ(PPH) の検討が進められた。そして、2006年3月30日、米国との間で「日米

共同イニシアティブ」が合意され3、同年73日から日米間でPPHが開始されることと

なった。なお、この時点では、EPOはPPHへ参加していない。

日 本

米 国

欧州(EPC)

42,545

53,993

71,994

26,334

23,811

23,616

図III-1-1 三極間の出願のフロー(2005年)4。数字は出願件数を示す。

(2)PPH対象の拡大

PPHの開始当初、PPHは最初に出願された第一庁での特許査定を根拠として申請する

ものであった(第一庁主義)。その後、日米間で検討が進められた結果、2006 年12 月よ

り、拒絶理由通知の中で特許可能と判断が示された請求項についても、PPHの申請が可能

となった。

2 特許庁「特許行政年次報告2006年版」7

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2006/honpen/1-1.pdf (最終アクセス日:2015年3月4

日)

3 日本国経済産業省・米国商務省「日本国経済産業省と米国商務省との間の知的財産権の保護及び執行と の他のグローバルな課題への協力強化のための共同イニシアティブ (抄)」

http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pdf/nichibei_highway/01.pdf (最終アクセス日:2015年3月4

日)

4 EPO, JPO and USTPOTrilateral Statistical Report 2006 Edition30Fig3.11

(24)

また、開始当初は、日本出願あるいは米国出願を優先権の基礎としたパリルートの出願

のみが対象であったが、こちらも検討が進められ、日米間においては2007年5月からPCT

経由の出願もPPHの対象とすることとなった。さらに、2008年1月からは優先権主張を

伴わないPCT出願(ダイレクトPCT出願)についてもPPHの対象となった。このよう

なPPHの対象の拡大は、その後、日米間のみならず他の国・地域の特許庁との間のPPH

にも適用されていった。

(3)PCT-PPHの開始

PPH申請の対象にPCT出願を加えて間もなく、USPTOから、PCTのサーチレポート

の肯定的な見解に基づく PPH の申請を認めてもよいのではないか、という意見が出され

た。JPOがPCTのサーチレポートの利用可能性を調査した結果、実体審査を経て特許可

能と判断された審査結果も、PCT国際段階で作成されたサーチレポートも、その利用性は

同程度であると結論づけられた5。この結果に基づき、200911月に開催された三極特許

庁会合でPCT-PPHが合意された。なお、EPOはPCT-PPHに参加すると同時に、通常型

の PPH にも参加することとなった。以降、JPO は、世界各国の国際調査機関に対して

PCT-PPHへの参加を促している。

(4)PPH MOTTAINAIの開始

PPHの利用拡大の検討の過程で、第一庁主義を撤廃するというアイデアが提案された。

すなわち、第一庁の審査のみを基に PPH を申請するのではなく、いずれかの庁での審査

結果があればPPHの申請を可能とする、という案である。このスキームは、2011年3月

に開催された多国間PPH長官会合において、JPOよりPPH MOTTAINAI Pilotとして

提案された。複数の特許庁から賛同が示された結果、PPH MOTTAINAIは、日本、米国、

英国、カナダ、フィンランド、ロシア、スペイン、オーストラリアの8つの特許庁で同年

7月15日から利用可能となった(ただし、開始当時、日豪間については未締結であった。

現在は後述するグローバルPPHへの参加によって利用可能となっている。)。なお、EPO

は2012年1月29日から参加している。

これまでのPPHは、第一庁の審査結果に基づいてのみ可能であったが、PPHの申請制

限によって有益な審査結果が他庁間で十分に活用されないという「モッタイナイ」状況が

あったため、このプログラムの名称を「PPH MOTTAINAI(モッタイナイ)」とした。

(5)PCT-PPHPCT規則化への動き

PPHの国際調和が進む中、 2013年5月のPCT ワーキンググループでは、PCT-PPH

をPCT規則に組み入れようとの提案が、米国と英国の共同提案によってなされた6。しか

しながら、 2014年6月のPCTワーキンググループにおいては、人的・経済的資源の問

題や国際審査機関の審査の質の問題等を理由としたブラジルやインド等の国からの反対に

5 特許庁調整課品質管理室・審査企画室「PPHPCTを利用した特許出願に関する日米欧三極審査比較分析

--審査の品質向上に向けて」知財管理Vol.61 No.9(2011)1389頁以下

6 PCT/WG/6/17 http://www.wipo.int/edocs/mdocs/pct/en/pct_wg_6/pct_wg_6_17.pdf (最終アクセス日:

(25)

遭う、いまだ合意には至っていない720152月のPCT国際機関会合(PCT-MIA)に

おいても、前記提案について賛否両論の状況であった8。当面はグローバルPPHに参加す

る国を増やすことに注力すべきことについて反対を述べる国はなかった。

(6)グローバルPPHIP5PPH試行プログラムの開始

PPHは基本的には二国間の取り決めによるものであるため、PPHの参加国が増えてく

ると、A国に対しては通常型のPPHが適用されるが、B国に対してはPPH MOTTAINAI

が適用される等、事情が複雑となっていった。このような中、JPOは多国間特許審査ハイ

ウェイ長官会合や実務者会合において、多国間 PPH フレームワークの形成を主張し続け

てきていた。その結果、JPOは、16か国・地域とグローバルPPHの合意に至った。この

プログラムは、2014年1月から開始となっている(なお、2014年12月末時点で、EPO

及びSIPOはグローバルPPHに参加していない。)。

並行して、2013 年 9 月の五大特許庁(IP5)長官会合で、五大特許庁相互間で PPH

(IP5PPH)を開始することを合意し、こちらも2014年1月から開始となった。

グローバルPPH、IP5PPHによって、参加国間で利用できるPPHの種類に隔たりがな

くなり、制度の国際調和と利便性が向上した。

(7)PPHの参加国

2014年末時点のPPHの参加国・地域を下記の表III-1-1に示す。我が国を含めた33 の

PPH参加国・地域のうち、我が国は30の国・地域でPPHの利用が可能である(我が国

とPPHが利用できない国は、チェコ、ニカラグアの2国である。)。現在、我が国から海

外になされる9割以上の出願でPPHの利用が可能となっている。

表III-1-1 PPH参加国・地域。灰色は我が国からPPHが利用できない国を示す。

アメリカ 韓国 イギリス カナダ

オーストラリア デンマーク フィンランド ロシア

ハンガリー スペイン ポルトガル スウェーデン

イスラエル 北欧特許庁 ノルウェー アイスランド

シンガポール オーストリア ドイツ 欧州特許庁

中国 メキシコ 台湾 フィリピン

コロンビア チェコ ポーランド ユーラシア特許庁

インドネシア ニカラグア タイ マレーシア

7 PCT/WG/7/29 http://www.wipo.int/edocs/mdocs/pct/en/pct_wg_7/pct_wg_7_29.pdf (最終アクセス日:

2015年3月5日)

(26)

(8)PPHの種類

(i)通常型PPH

通常型のPPHは、第一庁(OFF:Office of First Filing)で特許可能と判断された出願 について、出願人の申請により、第二庁(OSF:Office of Second Filing)での審査を「早

期審査」とすることを可能にするものである。例えば、下記の図III-1-2のような例が考え

られる。

A庁出願

B庁出願

特許可能

PPH申請

優先権主張 OK

第二庁(OSF) 第一庁(OFF)

図III-1-2 通常型PPHの例

(ii)PPH MOTTAINAI

第一庁に限らず、審査が先行した特許庁(OEE:Office of Earlier Examination)で特 許可能と判断された出願について、出願人の申請により、審査が後続する他国の特許庁 (OLE:Office of Later Examination)での審査を「早期審査」とすることを可能にする

制度である。例えば、下記の図III-1-3のような例が考えられる。

A庁出願

特許可能 優先権主張

OK

B庁出願

PPH申請

先行審査庁(OEE)

後続審査庁(OLE)

(a) A庁出願

PPH申請 優先権主張

OK

特許可能 B庁出願

C庁出願

先行審査庁(OEE)

後続審査庁(OLE)

(b)

(27)

(iii)PCT-PPH

特 定 の 国 際 調 査 機 関 が 作 成 し た 見 解 書 (WO/ISA:Written Opinion of the International Searching Authority)や特定の国際予備審査機関が作成した見解書(WO /IPEA:Written Opinion of the International Preliminary Examining Authority)又は 国際予備審査報告(IPER:International Preliminary Report on Patentability)で肯定

的な見解が示された出願について、出願人の申請により、指定官庁(DO:Designated

Office)等での審査を「早期審査」とすることを可能にするものである。例えば、下記の

図のような例が考えられる。

PPH申請

OK

特許性あり 見解書/IPER PCT出願

指定官庁B 指定官庁A

図III-1-4 PCT-PPHの例

(iv)グローバルPPHIP5PPH

グローバルPPHは、その参加国間において、いずれの種類のPPHでも利用を可能にす

るものである。また、IP5PPHは、五大特許庁間で、同様にいずれの種類のPPHでも利

用を可能にするものである。これらによって、各国間で異なっていた PPH の締結内容を

整理し、申請条件の調和が図られた。

2.国内ユーザーの意識・意見

国内アンケート及び国内ヒアリング調査の結果をもとに、国内ユーザーの PPH に対す

る意識及び意見を検討する。国内アンケート及びヒアリングの実施方法については、II.

で述べた通りである。

(1)PPHの認知度について

PPHは、ある国の庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、他国

の庁において簡易な手続で早期審査を受けられるようにする仕組みである。この制度の認 知度について調査をした。

PPHを知っているか否か質問したところ、回答者220者中218者(約99%)が「知っ

ている。」と回答し、2者(約1%)が「知らない。」と回答した(図III-2-1)。PPHは、

2015 年で開始後 8 年目となる制度であり、国内ユーザー間において広く知られている制

(28)

知っている。 218者(99.1%) 知らない。

2者(0.9%)

図III-2-1 国内ユーザーにおけるPPHの認知度(N=220、無回答=1)

次に、様々な種類のあるPPHのうち、知っているPPHの種類を調査した。

回答者216者中210者(約97%)が通常型のPPHを知っていると回答した。PCT-PPH

は174者(約81%)が、PPH MOTTAINAIは104者(約48%)が知っていると回答し た。2014年1月6日より開始されたグローバルPPHの認知度については、61者(約28%)

に留まっている。なお、五大特許庁(IP5)間でグローバル PPH と同様の効果を奏する

IP5PPHの認知度は、41者(19%)であった(図III-2-2)。なお、各PPHの説明は、III.

1.(8)を参照されたい。

210 (97.2%)

174 (80.6%)

104 (48.1%)

61 (28.2%)

41 (19.0%)

通常型PPH

PCT-PPH

PPH MOTTAINAI

グローバルPPH

IP5PPH

図III-2-2 国内ユーザーにおけるPPHの種類の認知度(N=216、無回答=5)

(2)PPHの利用経験

PPHの利用経験の有無について調査した。

回答者217者中135者(約62%)のユーザーが「利用したことがある。」と回答し、82

者(約38%)が「利用したことがない。」と回答した(図III-2-3)。なお、PPHの種類は

考慮していない。

約6割の回答者がPPHを利用したことがあると回答したことから、国内ユーザー間で

(29)

利用したことが ある。 135(62.2%) 利用したことが

ない。 82(37.8%)

図III-2-3 国内ユーザーにおけるPPHの利用経験の有無(N=217、無回答=4)

(3)PPHのメリット・デメリット

(i)PPHのメリット

JPOのWEBページによれば、PPHのメリットとして、「早期審査の手続が簡素化でき

る、又は通常の早期審査制度を有していない特許庁において早期審査を受けることができ

る」、「オフィスアクション回数の減少による審査期間の短縮」、「オフィスアクション回数

の減少による応答コストの軽減」及び「特許率の向上」の4点を挙げている9。そこで、実

際に国内のユーザーがPPHのどのような点にメリットを感じているのか、調査を行った。

PPHの一般的なメリットについて調査したところ、「早期に審査結果を得られる」とい

う回答を選択した回答者は回答者142者中128者(約90%)に及び、「オフィスアクショ

ンの回数を減らせる。(拒絶対応費用を削減できる。)」は95者(約67%)であり、「特許

率が向上する」が49者(約35%)であった。「既に得られた権利範囲と同一内容の権利範

囲を取得できる。」は30者(約21%)、「他の早期審査制度を利用するよりも手続が容易で

ある。」は26者(約18%)、「権利の安定性が向上する。」は10者(7%)であった(図III-2-4)。

なお、「その他」を選んだ回答としては、「審査経過禁反言のリスクを低減できる場合があ

る。」(繊維・パルプ・紙製造業)との回答があった。オフィスアクションが少なければ、

包袋に残る記録が少なくなり、禁反言のリスクが低減できるということである。

この調査から、早期に審査結果を受けられることを PPH のメリットだと考えている国

内ユーザーが多いことがうかがえる。

JPOが紹介しているPPHのメリットと、国内ユーザーの感じているPPHのメリット

とを比較すると、両者は整合している様子が見て取れる。すなわち、JPOの挙げている4

つのメリットについて、国内ユーザーもまたメリットとして認識しているといえる。特に、

「早期に審査結果を得られる」という点は、回答者の90%程度がメリットとして考えてお

り、PPHのメリットとして突出していた。しかし、JPOの掲げる4つのメリットのうち、

「特許率の向上」については、回答者の約35%程度しかメリットとして挙げておらず、他

のメリットと比べると低い値にとどまっている。

9 特許庁「特許審査ハイウェイ活用のために」

(30)

128(90.1%)

49(34.5%)

95(66.9%)

30(21.1%)

10(7.0%)

26(18.3%)

2(1.4%)

早期に審査結果を得られる。

特許査定率が向上する。

オフィスアクションの回数を減らせる。 (拒絶対応費用を削減できる。)

既に得られた権利範囲と同一 内容の権利範囲を取得できる。

権利の安定性が向上する。

他の早期審査制度を利用する よりも手続が容易である。

その他。

図III-2-4 国内ユーザーの考えるPPHのメリット(N=142、無回答・スキップ=79)

「特許率が向上する。」をPPHのメリットとして挙げる国内ユーザーが少ない理由につ

いて考察する。

まず第一に、「特許率が向上する」ということを回答しづらいということが考えられる。

特許査定を得られるか否かということは、個々の出願内容(技術内容)に依存するもので あるため、特許率が向上するか否かは一定規模の統計データから算出しなければならず、

簡単には回答し難い。また、通常案件の特許率と、PPH案件の特許率の比較が必要となる

ところ、データがなければ回答が難しく、感覚的には把握し難い可能性がある。したがっ

て、PPH案件の統計情報を算出したことがない国内ユーザーの一部が、「特許率が向上す

る」という回答をできなかったのではないだろうか。これに対して、審査が早期に行われ たかどうかや、オフィスアクションの回数が減少したかどうかということは、ファースト アクションまでの期間やオフィスアクションの回数のデータから比較的容易に得ることが できる上、感覚的にも把握し易いデータであるため、回答者が多かった可能性がある。

第二に、特許率の向上を目的にPPHを利用していないことが考えられる。PPHのメリ

ットとして9割の回答者が「早期審査を受けることができる」としている。早期審査のみ

を目的にしている国内ユーザーは、オフィスアクションの回数や特許率をメリットとして 意識せずに利用しているのではないだろうか。したがって、実際には登録査定率は向上し ていたとしてもこれをメリットとして回答しなかった可能性がある。

第三に、そもそもメリットではない、すなわち、実際に特許率は向上していないことが

考えられる。日本知的財産協会の調査10によれば、JPOの成果物を利用してPCT-PPH

申請した案件と、肯定的なISRが得られたPCT出願を移行した案件とでは、移行国の特

(31)

許庁のアクションにて「肯定的なファーストアクション」11が示される割合は、米国・中

国で同程度であると報告している。すなわち、JPO が作成した肯定的な ISR を基に

PCT-PPHを利用した場合と、PPHを利用せずに通常の移行をした場合とでは、特許率に

差がないのではないだろうか。同文献には考察されていないが、この仮定を拡大すれば、

JPO で肯定的見解を得られたクレームを外国において審査に付せば、PPH を利用しなく

ても特許率に変化はないという可能性が示唆される。実際に、本調査研究のヒアリング調 査においても、この理由により、特許率は向上しないと考えていると回答した国内ユーザ

ーが見られた。したがって、このような見解を有する国内ユーザーが PPH のメリットと

して「特許率が向上する。」を選択しなかった可能性がある。

国内ユーザーのPPHのメリットに対する見解を紹介する。PPHのメリットを「早期審

査を受けることができる」のみと回答した者や、加えて「オフィスアクションの回数を減

少させることができる」や、「登録率を向上させることができる」を同時に回答した者など

に分けて紹介する。

■ PPHのメリットは「早期審査を受けられること」である。

・PPHのメリットは早期に審査を受けることができることだと考える。また、各国で同

一の権利範囲を取得できる可能性がある点もメリットである場合がある。医薬品業界 では、物質特許を重視するので、各国で安定した物質特許を取得することを望んでい る。多くの国に出願するので、各国での請求項が一致している方が管理上も有利とな

る。また、同一範囲の発明を複数国で審査されるので、PPHを経て得られた権利は通

常よりも安定しているかもしれない。特に日本や米国、EPOといった三極で同一の権

利を得られる場合は、権利の安定性に期待ができる。(医薬品製造業)

・PPHを利用することで、早期の権利化ができるのがメリットだと考える。製品の上市

時には適切な知的財産権を保有したいと考えており、グローバルに早期に権利化する

ことが望ましい。海外での早期の権利化を目指すために、ダイレクトPCT出願を行

い、PPHや早期審査請求制度を利用するケースが多くある。ISRで肯定的な見解が示

された出願についてはPCT-PPHを利用して権利化を図っている。肯定的な見解が得

られなかった場合でも、日本に早期に移行した上で早期審査請求を行い、権利化でき

た後は、JPOの審査結果をもとに各国でPPHを利用している。(機械製造業)

・PPHのメリットは早期の権利化が可能となる点だと考える。制度が始まった初期の頃

にPPHのセミナーに参加したことがあり、その際に、PPHのメリットとして、オフ

ィスアクションの回数が減少することでコストが安くなるというようなことが挙げ

られていた。費用削減を目的にPPHを利用し始めたが、現在では、PPHのメリット

は早期に審査を受けることができる点に尽きると考えている。第1国で特許査定がな

(32)

されていれば(あるいはISRやIPERで特許性ありとされていれば)、PPHを利用し ようがしまいが、審査速度以外の結果は大して変わらないという検討結果も「知財管

理」12誌で報告されている。我々も実際にそのような傾向を得ている。したがって、

早期にオフィスアクションを得られることがPPHのメリットだと考えている。(化学

工業)

・特許庁からのアクションが早いのがメリットだと考える。権利化をする一担当者とし ては、オフィスアクションが早いことで、過去の包袋情報や他国の状況が頭に残って おり、対応を取りやすいと感じている。各国で一貫した拒絶の対応を取ることができ ると考える。なお、当社では、サンプル出荷からすぐに採用が決まって事業化するよ

うな技術もある。したがって、早期に権利化することを目的にして PPH を利用して

いる。(化学工業)

・日本の審査結果を基にしてPPHの申請をしている。PPHを利用することで、米国や

韓国において、早期に権利化できた案件があった。この点がメリットだと考える。し かしながら、米国でファイナルのオフィスアクションが出されている案件もあり、必

ずしも早期に登録できるとは言えない。また、EPOやドイツ、中国ではそれほど早期

にアクションが出されていない。(電気機械製造業)

・第2国での審査が加速されることがメリットだと考える。(電気機械製造業)

・玩具・キャラクター製品は模倣されやすい分野であるため、製品を保護する知的財産

権の獲得が重要であり、早期に権利化する必要性も高い。PPHを利用すると早期にア

クションを受けることができるので、この点がメリットであると考える。(その他の

製造業)

・ソフトウェア関連の技術はすぐに陳腐化してしまうため、その特許については早期の

権利取得をして活用を図りたいと考える。したがって、PPHには、早期に審査結果が

得られることを期待している。(その他の非製造業)

■ PPHのメリットは「オフィスアクションの回数を減少させることができる(コスト

が削減できる)こと」である。

・米国でのオフィスアクション費用の削減を目的に PPH の利用を開始した。オフィス

アクションを減らすことができ、費用削減につながるので、この点をメリットだと感

じる。(その他の製造業)

・PPHを利用したことはない。主にライセンスを目的として特許出願している。国内の

権利でライセンスを行うことも可能ですが、外国でも権利を有している方がライセン

(33)

スの対象として評価され易く有利であるため、外国出願も行っている。しかしながら、

特許に割ける予算はあまり多くない。そのため、JST(独立行政法人科学技術振興機

構)からの支援を受けて出願や権利化を行っている。費用承認は、特許性や実施可能 性、有用性などが評価される。支援が決定されても権利化手続の過程で定期的な見直 しが行われ、中止になる件もある。

このような事情があるため、PPHに期待することは審査の迅速化や費用や負担の軽

減である。JPOでの審査結果が有効に各特許庁で利用され、拒絶対応の手間が省ける

のであれば、コストメリットがあり、利用価値があると思われる。しかし代理人から

の意見では、米国出願などにおいてはあまり PPH の効果が期待できないということ

である。例えば、三極間で引用される文献が異なることがあるのはやむを得ないが、 米国の審査官はあまり日本の審査経過を考慮せず独自の審査を行っているということ を代理人から聞いた。

今後、三極間でのハーモナイゼーションが進んで、JPOで得られた審査結果が各庁

で受け入れられるようになるなどするのであれば、是非利用したいと考えている。な

お、JPOの審査結果でのPPHが難しいのであれば、例えばUSPTOやEPOでの審

査結果を基にしたPPHの利用もあり得る。ただ、EPOの審査は遅いという問題はあ

る。

それから、国内出願については、特許性を判断する(外国出願の可否を判断する) ために早期審査を行うことがあるが、外国においては早期に権利化するというニーズ

はそれほど高くない。したがって、PPHによってコスト(拒絶対応の負担)が軽減さ

れることが可能であれば、これがメリットだと考えられる。(大学)

■ PPHのメリットは「早期審査を受けられること」、及び「オフィスアクションの回数

を減少させることができる(コストが削減できる)こと」である。

・メリットは早期に権利化できることだと考える。副次的なメリットとして、オフィス アクションの回数を減らすことができると考える。医薬品を製造販売しているため、 通常、臨床試験が必要となるような製品の特許権については延長登録出願を行う。臨 床試験にかかった年月については、確実にその期間の分の延長登録を受けたいので、 臨床試験の開始までに特許権の設定の登録を受けておく必要がある。このようなニー

ズのもと、必要に応じ、自国内でPPHを利用している。PCT出願した後、ISRが肯

定的であれば、PCT-PPH を行っている。肯定的な見解でない場合は、国内の早期審

査制度を利用している。(医薬品製造業)

・早期の権利化とオフィスアクション回数の低減がメリットだと考える。韓国で PPH

の利用をしたが、拒絶理由通知なしで登録となるケースが多くあった。逆に米国では

このようなメリットがあまりなかった。(繊維・パルプ・紙製造業)

・早期の権利取得も可能になるとは思うが、PPHを利用する主たる目的はコストの削減

である。PPHを利用するとオフィスアクションの回数が減り、コストの削減につなが

(34)

う審査が行われてしまうと権利の安定性に影響が出ると考えられるので、安易にメリ ットとは言えないかもしれない。しかしながら、権利を保有できれば他社への牽制効

果はあるだろうから、一長一短だと考える。(輸送用機械製造業)

・早期に権利化できる点と、コスト削減の効果がある点がメリットだと考える。PCT出

願後、PCT-PPH を利用して権利化している。主な市場が米国であるため、米国移行

をするが、日本へは移行しないものがある。したがって、JPOでの審査結果を用いる

ような通常型のPPHは利用していない。PCT-PPHは、JPOの発行するISRで、肯

定的な見解であるものを利用して行っている。米国でPCT-PPHを利用し、早期の権

利化とコスト削減が可能になり、メリットがあると感じた。

しかし、出願や権利化の時点では、製品の仕様が定まっていないことがほとんどで

ある。ISRを得た出願当初の請求項での権利化を望まない場合、請求項の補正が必要

になるので、PPHは利用しない。このような状況から、現在は、仕様が決まって自社

での実施が確実なものや、比較的重要度の低い特許出願(コアとなる技術に関する出

願の周辺特許、ポートフォリオを構築する特許)について PPH を利用している。重

要度が低いケースについてはコスト削減には貢献度が大きい。(電気機械製造業)

・早期に審査結果を得られることと、オフィスアクションの回数の減少にメリットを感 じている。ファーストアクションの発行は早いし、オフィスアクションは半分程度に

減っている。デメリットに感じている点はない。現在、PCT出願で肯定的な見解が示

されたものについて、日本にPCT-PPHを申請し、拒絶理由なく登録した後、外国に

おいて通常型のPPHを利用して権利化している。(鉄鋼・非鉄金属製造業)

■ PPHのメリットは「早期審査を受けられること」、及び「特許率が向上すること」で

ある。

・国によっては、審査が早くなること及び特許率の向上がメリットだと考える。特に米

国と中国で効果が大きく、EPOや韓国では効果が小さいように感じる。韓国は通常の

審査であっても比較的審査が早いので、PPHを利用しようがしまいがそれほど変わら

ないと感じている。(電気機械製造業)

■ PPHのメリットは「早期審査を受けられること」、「オフィスアクションの回数を減

少させることができる(コストが削減できる)こと」及び「特許率が向上すること」 である。

・PPHは早期権利化を目的として利用している。標準規格に関する技術について、PPH

を利用することが多い。PPHを利用すると、早期に審査結果が得られ、特許率が向上

し、オフィスアクションの回数を減らせるため、早期の権利取得が可能となる。

なお、PPHを利用することによって、第一国での権利範囲と同等か狭いものとなるデ

メリットはあるが、標準規格特許のための特許プールの利用を考えると、むしろ第一

表 III-2-1  AIPLA 及び USPTO による PPH のコスト削減効果の試算。 平均オフィス  アクション回数  通常案件の  平均コスト削減効果($) 比較的複雑な案件の  コスト削減効果($)  通常型 PPH  2.3  627    894~1,166  PCT-PPH  1.61  2,066  2,948~3,850  そこで、実際に国内ユーザーは PPH を利用することにコストメリットがあると考えて いるのかどうか調査した。なお、この調査では、国内ユーザーの自由な見解を聴取したも
図 III-2-27  JPO の Web ページで開示する PPH に関する情報のうち、国内ユーザーが有益だと考える もの(N=173、無回答=48.)  続いて、PPH ポータルサイトの認知度について調査を行った。PPH ポータルサイトは JPO が管理する世界のユーザーのためのポータルサイトである。2014 年末現在、英語の みで開示されている。  アンケートの結果、回答者 217 者中 88 者(約 41%)は、PPH ポータルサイトを「知 っている。 」と回答したが、129 者(約 59%)はポー
図 III-3-EP-3  EPO で PPH を利用した際に困った事例  (a)通常型 PPH(N=37、無回答・スキッ プ=184) (b)PCT-PPH(N=25、無回答・スキップ=196)。
図 III-3-EP-5  EPO で PPH を利用した際のファーストアクションまでの期間 (a)通常型 PPH(N=19、 無回答・スキップ=202) (b)PCT-PPH(N=7、無回答・スキップ=214)    次に、査定までの期間について、 「1 か月以内」を選択したのが通常型の PPH で回答者 13 者中 0 者(0%) 、PCT-PPH で回答者 9 者中 1 者(約 11%) 、 「2~5 か月」を選択した のが通常型 PPH で 3 者(約 23%) 、PCT-PPH では 0 者(0%
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